SPCとは?工程能力管理の基礎をわかりやすく解説
点がUCLを超えた朝
金曜の朝8時、工程管理者の山本さんが管理図を印刷して壁に貼り出した。いつもの日課だ。
立ち止まる人はほとんどいない。だが先月、Xbar管理図の点がUCLを超えた日があった。山本さんが旋盤の主軸ベアリングを点検させたところ、摩耗が進行していた。交換費用は12万円。あのまま回していたら主軸が焼き付いて、修理費200万と2週間のライン停止だった。
「不良が出る前に気づけた」。これがSPCの力だ。
SPCとは何か
SPC(Statistical Process Control)。日本語では「統計的工程管理」。製造工程のデータを統計的に分析し、工程が安定しているかどうかを判断する手法になる。
「不良が出てから対策する」ではなく、「不良が出る前に兆候をつかむ」。事後対応から事前察知へ。この転換がSPCの本質だ。
管理図の基本
SPCの中心ツールが管理図(Control Chart)。
工程から定期的にサンプルを取り、測定値をプロットしていく。中心線(CL)と上下の管理限界線(UCL/LCL)を引いて、点がこの範囲に収まっているかを見る。
管理限界線は通常、平均値 ± 3σ(標準偏差の3倍)で設定する。99.7%のデータがこの範囲に入るはずだから、はみ出したら「何か異常が起きている」と判断できる。
よく使うのはXbar-R管理図。サンプルの平均値(Xbar)と範囲(R)を2本の管理図で同時に監視する。
Cp と Cpk
工程がどれだけ規格に対して余裕があるかを示す指標。
Cp = (規格上限 − 規格下限)÷ 6σ
工程の「実力」を表す。Cp=1.33以上が一般的な合格ライン。自動車業界ではCp=1.67以上を求められることもある。
Cpk = min((規格上限 − 平均)÷ 3σ, (平均 − 規格下限)÷ 3σ)
Cpとの違いは「中心からのズレ」を考慮するかどうか。Cpが1.5でもCpkが0.8なら、工程の中心が規格の中心からズレている。設備のゼロ点を調整すれば改善できる──実際にこれでCpkが0.8から1.4に回復したケースは少なくない。
導入時の注意
SPCは「測定」が命だ。測定のばらつきが大きいと、工程のばらつきと区別がつかなくなる。Gage R&R(測定システム解析)で測定器の能力を先に確認する。目安は%GRR < 10%。
データの正規性も確認が要る。管理図は正規分布を前提にしている。表面粗さのデータのように片側に偏る分布では、管理図をそのまま適用すると誤判定が頻発する。
管理図を毎朝見る意味
数字の並びに違和感を覚えたとき。それがSPCの効いている瞬間だ。
8年間運用してきて思うのは、SPCは高度な統計手法というより、工程を「見る目」を養う道具だということ。点の動きに目が慣れると、数値がUCLを超える前に「何か変だな」と気づけるようになる。その勘所は、管理図を毎朝見ることでしか身につかない。