FMEAとは?製造業での使い方を現場目線でわかりやすく解説

「全部の重大度を8にしといて」

工程FMEAのレビュー会議、品質管理課長が表を見て眉をひそめた。

「重大度、全部8になってるけど、これ意味ある?」

黙り込む担当者。50件以上のFMEAを作ってきた経験で言えば、この光景は珍しくない。形だけ埋めて、本質を外すケースが後を絶たない。

FMEAとは何か

FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)。日本語では「故障モード影響解析」。製品や工程で起こりうる故障を事前に洗い出し、影響の大きいものから対策を打つ。

自動車業界が発祥で、IATF 16949の要求事項に含まれる。電子部品、医療機器、食品製造にも広がっている。

設計FMEAと工程FMEA

2種類ある。

設計FMEA(DFMEA) は製品設計段階で行う。「この部品がこう壊れたら、ユーザーにどんな影響が出るか」を分析する。

工程FMEA(PFMEA) は製造工程で行う。「この工程でこのミスが起きたら、製品にどんな不具合が出るか」を分析する。製造現場で直接使うのはこちらだ。

RPNの計算

RPN(Risk Priority Number)= 重大度 × 発生度 × 検出度

要素意味スケール
重大度(S)故障が起きたときの影響の大きさ1〜10
発生度(O)故障が起きる頻度1〜10
検出度(D)出荷前に見つけられる確率1〜10(低いほど見つけやすい)

RPNが高いものから優先的に対策する。閾値は組織によるが、100以上を要対策とするケースが多い。

ただし2019年のAIAG-VDA統合版ではRPNに代わり**AP(Action Priority)**方式が推奨されている。High/Medium/Lowの3段階で判定する。RPNだと「2×5×10=100」と「10×10×1=100」が同じ数字になってしまう。重大度10の方が圧倒的に危険なのに、同じスコアで処理されるのは問題だ。

現場でハマる3つの落とし穴

1. 重大度の一律化

冒頭の「全部8」が典型。怖いから高くしておこう、という心理は分かる。だが全項目を同じ重大度にすると、本当に危険な故障モードが埋もれる。重大度はユーザーへの影響で客観的に決める。「人身事故につながるか」「車両が停止するか」「外観不良か」──影響の重さが違えば重大度も変わるはずだ。

2. 作って放置する

FMEAを初期に作って、そのまま棚に入れる。これが一番多い。ある工場で不良が連発したとき、FMEAを引っ張り出したら3年前の情報のままだった。その間に工程は2回変わっていた。生きたFMEAは常に更新される。

3. 現場を呼ばずに作る

品質管理部門だけで会議室にこもって書く。すると「実際には起きない故障モード」が並び、「毎日ヒヤリとしている故障モード」が抜ける。現場のオペレーターを最低1人、レビューに入れるだけで精度は段違いに上がる。

FMEAが効くとき

正しく運用すると、FMEAは事前に問題を潰す武器になる。あるラインで工程FMEAのレビュー後にRPN=240の項目を発見し、ポカヨケを追加した。導入後、そのモードの不良はゼロになった。コストは8万円。出荷後に発覚していたら推定被害は500万円以上だった。

事前に30分考えるか、事後に30日対応するか。その差を数字で見せられるのが、FMEAの強みだ。